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京都大学原子炉実験所

原子炉実験所は、京都大学の附置研究所かつ全国大学の共同利用研究所として、昭和38年に「原子炉による実験及びこれに関連する研究」を行うことを目的に設置された。以降、当所は一貫して核エネルギーの利用と中性子等の粒子線・放射線の利用に係る研究教育の面で相応の役割を果たしている。現在も全国から年間延べ約6千人・日の研究者や学生などが、大学の持つ原子力施設としては国内最大規模の研究用原子炉(KUR)等の施設・設備を利用して実験研究を行うために来所している。京都大学研究用原子炉(図3-1)は、スイミングプールタンク型の原子炉で、物理学、化学、生物学、工学、農学、医学等広く実験研究に使用されている。 研究炉は現在休止中であるが、平成20年より濃縮度20%弱の低濃縮ウランを用いて運転が再開され、最大熱出力(5,000kW)運転時の平均熱中性子束は 約3×1013n/cm2/sである。


図3-1


図3-2

ホットラボラトリ(図3-2)は、原子炉室に接続して設置されており、原子炉照射した物質の各種試験、化学処理、放射能測定等を安全に取り扱うための施設である。ホットラボラトリでは、放射性同位元素及び実験用核燃料物質を扱うことが出来る。ホットケープ室(図3-3)は、圧気輸送管で照射する試料カプセルの出し入れのためのステーションや、黒鉛設備圧気輸送管ステーションがある。その他、長期照射カプセルや水圧照射カプセルの封入処理が可能である。ホットケーブ室には、厚さ 1mの鉛ガラス窓から内部を見ながら、最高185TBqまでの強放射性物質を安全に取り扱うための遠隔操作装置が設置されたホットセルが3室ある。ジュニアケーブ室(図3-4)は、圧気輸送管のステーションが20cm鉛遮蔽セルに設けられており、α放射性同位元素(特に核燃料物質)を扱うグローブボックスが設置され、超ウラン関連の実験が行われている。セミホット実験室(第1〜3実験室)では原子炉照射した試料の化学処理等を行なう。

 
図3-3 ホットケーブ室   図3-4 ジュニアケーブ室

原子炉棟ホットラボリでは、アクチニドの化学・放射化学を主要な研究テーマとして進めており、中でも原子力燃料サイクルの高度化開発の一貫として、 TRU核種(Trans-Uranium Elements)の化学的あるいは放射化学的な実験研究を進めてきた。実験用核燃料物質として、Th、U、及びPu、更に他のMAα放射性核種(Np, Am, Cm)を利用することが可能である。また、研究炉やLINACでの照射によってアクチニドトレーサを製造して利用することが可能である。

従来共同利用研究によって進められてきた研究は、

  1. アクチニド及び核分裂生成物核種の中性子断面積研究
  2. マルチモード核分裂の実験的解析研究
  3. ペロブスカイト型酸化物の結晶学的性質
  4. アクチニド元素の水溶液化学研究
  5. 重・超アクチノイド元素の単一原子化学のための基礎研究
  6. TRU及びFPの化学分離と同位体の化学的特性に関する研究
  7. アクチニド元素及び核エネルギー材料に関する化学的研究
  8. 溶融塩系でのf-元素の化学的研究
  9. 乾式再処理系でのウランの電気化学的研究及びアクチニド元素の分析研究
  10. U照射によるマルチトレーサ製造とその利用、等である。アクチニド研究に利用する装置としては、不活性雰囲気グローブボックス、湿式用グローブボックス、熱分析装置、電気化学測定装置、粉末X線回折装置、走査型電子顕微鏡、ガンマ線検出器、アルファ線検出装置、ICP-質量分析装置、ICP-発光分析装置、ラマン分光器、などである。